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カート

カートが空です

大峰山 小谷川

小さい沢ほど油断できない

記事: 大峰山・小谷川|小さい沢ほど油断できない

field-report


昨日から降り続く雨を見ながら、正直なところ半分は諦めていた。

今回の目的地は大峰山脈、北山川水系 小谷川。

今季2回目の沢登りだ。

前日の夜、島根からシンさんとミッシーがやってきた。

せっかく集まったので、そのまま我が家で宴会。

翌日は早起きだというのに、酒を飲みながら山以外の話で盛り上がるのは当たり前。

外では雨が降り続いていたが今を唄う俺達にとってはあまり関係無いのも当たり前。

どうせ明日になれば分かる。ダメなら帰ればいい。



いやいや行ったが結果大成功の沢となる。


朝5時。

家を出ると想像以上の大雨だった。

4時間後に戻るかもしれないとレナに告げ家を出る。

増水していたら撤退は当たり前だから。

そんなことを考えながら2時間ほど車を走らせる。

ところが進むにつれて雨脚は弱くなり、空が少しずつ明るくなっていく。

時折、青空まで見え始めた。

現地へ到着する頃には雨は完全に止んでいた。

準備を始めると、地面にはさっそくヒル。

大峰の沢に来たなと思う。

ヒルは歓迎される存在ではないが、大峰では避けて通れない。

準備を整え、沢へ向かう。

そして入渓してすぐに現れたのが巨大なゴルジュと巨大な滝だった。

久しぶりに見る圧倒的な景観。

谷が狭まり、岩壁が立ち上がり、その奥に大きな滝が落ちている。

思わず足が止まる。

やっぱり大峰の沢はいい。

しかし、この滝は登れない。

感動した直後に巻き道へ向かう。

巻き道を探す一行。左岸を巻いて一旦林道にでた。



入渓してすぐに林道へ脱出するという少し残念なスタートになった。

気を取り直して再入渓。

久しぶりの大峰だった。

今回の小谷川は大峰の中では比較的小さな沢だ。

それでもスケールが違う。

岩一つ見ても大きい。

沢床の景色そのものに迫力がある。



さすが大峰だと思わせる力があった。

水温も予想より冷たくない。

もちろん腰まで浸かれば冷たい。

それでも6月としては十分許容範囲だった。



そして何より面白かった。

沢というのは、だいたい退屈な区間がある。

ただ穏やかに歩くだけの区間。

ひたすらゴーロが続く区間。

しかし小谷川は違った。

最初から最後まで変化が続く。

歩いていて飽きない。

次は何が出てくるのか。

そんな期待が途切れなかった。



途中、大きな滝に行く手を阻まれる。

左岸から大きく巻くことにした。

ロープも出した。

慎重に行けば難しくはない。

だが簡単でもない。

高く巻きすぎれば沢から離れる。

低すぎれば結局滝に阻まれる。

GPSと地形図を見ながらルートを探す。

行く手を阻まれた時に前へ進むためのルートを見つけだす。

これも沢登りの醍醐味の一つだ。



いい場所を見つけてトラバース。

その後は懸垂下降で沢へ復帰した。

2日ほど雨が降り続いていたので、水量は平水より明らかに多かったと思う。

それでも激流というほどではない。

増水した沢の難しさも感じながら楽しめる、ちょうど良い状態だった。

そして7〜8mほどの斜滝。

釜はないしヌメリがひどい。

安全を優先してロープを出した。

左岸にはクラックが多く、カムとナッツで支点を構築しながら登る。

ホールドはある。

だが滑る。

この時期らしい嫌なヌメリだった。

難しくはないが、気は抜けない。

そんなクライミングだった。

やはり沢は面白い。



仲間と協力して超えていく。まさに沢の醍醐味。


その後もロープを出すか?出さないかくらいの

考えさせられる地形を越えていき

やがて遡行終了点が近づいた頃だった。

せっかくなのでタクヤにリードをやってもらうことにした。

目的は登ることだけではない。

中間支点の構築。

終了点の構築。

現場でしか身につかない技術を経験してもらうためだ。

鬱陶しい流木も時には幻想的な雰囲気を作ってくれる


結果から言えば、中間支点は悪くなかった。

カムも決まっていた。

途中の枝も利用できていた。

終了点だけは少し違った。

こちらとしてはナチュラルプロテクションで構築してほしかったが、たまたま都合の良いアンカーがあった。

経験が浅ければ当然そちらを使う。

そこは理解できる。

問題はその後だった。

ロープアップが上手くいかない。

ロープが流れる。

引き上げるロープが絡まる。

ビレイポイントでの動きも悪く、全体が止まる。

結果としてロープはどんどん乱れていく。

今回は練習だから良かった。

しかも遡行終了直前だった。

もしこれが本番だったらどうだろう。

もしこの先にまだ何本も登攀が続いていたらどうだろう。

小さなロスは積み重なる。

ロープ処理で数分。

ギア整理で数分。

回収で数分。

その遅れは結果として全体へ影響する。

リードで時間が掛かるのは仕方ない。

終了点の構築やビレイポイントの選択も現場経験が必要だ。

だがロープの扱いやギア整理は違う。

普段から練習できる。

家でもできる。

公園でもできる。

結局、現場で現れるのは普段やっていることの積み重ね。

先輩に言われたからやる。

怒られたからやる。

そんな程度では身につかない。

自分で必要だと理解して、本気で覚えようと思わなければ技術なんて身につかない。

格好だけでやりたいなら、言っちゃ悪いが参加しないでほしい。

俺達の登山はチームプレイだ。

沢もクライミングも、一歩間違えれば死と隣り合わせ。

楽しいだけで続けられる遊びじゃない。

本気で考え学ぶ人間だけが次の冒険へと進める。

そんなことを考えながら遡行を終えた。

そして沢から上がって5分。

もう林道だった。

思わず笑ってしまう。

こんな楽な脱渓があるだろうか。

そのまま綺麗な林道を1時間歩いて駐車スペースへ戻る。

アプローチは楽。

沢は面白い。

適度に難しい。

景観も良い。

脱渓は一瞬。

正直、ここまで条件の揃った沢はなかなかない。

沢のすぐ横に林道が走っているので冒険感は少し薄いが・・・。

でも、それを差し引いても十分すぎるほど魅力的な沢だった。

今季2回目の沢登り。

今回も期待を裏切らなかった。

どんな山行でも鉄人が守ってくれる。


駐車スペースへ戻り、装備を片付けていると足に見慣れた吸血痕を見つけた。

またヒルである。

大峰では珍しい話ではない。

ただ、なぜか毎回オレだけやられる。

他のメンバーが無傷でも、なぜかオレだけ吸われている。

今回もそうだった。

シンさんもミッシーもタクヤも被害なし。

吸血されたのはオレだけである。

しかも厄介なのはここからだ。

ヒルに吸われること自体はどうでもいい。

問題は血が止まらないことだ。

毎回そうだが、とにかく止まらない。

さすがにこの状態で銭湯へ行くのは迷惑なので、みんなに断って風呂はパスさせてもらった。

そのまま焼肉 馬酔木で腹を満たし、解散。

帰宅後はベランダでロープを洗い、ギアを片付ける。

沢から上がって、ここまで5時間以上経過してやっと血が止まった。


出血が収まったのは約5時間後

 

 

KEI FUJIMOTO
Founder / Art Director / 週末冒険家

THUNDER BIRD HILLS代表。15年以上にわたり登山を続け、実地テストを重ねながらギアを開発。YouTube「THUNDER BIRD HILLS」ではフィールド・ドキュメンタリーを発信している。